LAS Production Presents

 

 

 

Soryu Asuka Langley

 

in

 

 

 

starring

Shinji Ikari

 

and

Mana Kirishima

as Charming Girl

 

 

Written by JUN

 


 

Act.3

ASUKA 

 

-  Chapter 4  -

 

 

 

 この章では、エッチな展開に入っていきます。文章上には18禁になるようなモノは盛り込みませんが、
 伊吹マヤちゃん的潔癖な方には刺激があり、または葛城ミサト的××な方には物足りないという中途半端なものになっています。
 まあ、私の書くものですから、内容Rでありながら実質中学生OK程度でありましょう。
 と、一応但し書き。

 

 

 

 

 

 

「あれ?あそこにいるの碇君じゃない?」

「そうね。アスカに会いにきたのかしら?」

「やだなぁ、朝っぱらから?」

「ちょっと、マナ。考えすぎなんじゃない?」

「でもさぁ、きっと碇君も眠れない朝を迎えたのよ。二人とも初めてだったから、病み付きになってるんだよ」

「そ、そんなもんかな…?」

「潔癖症の洞木ヒカリさんとしては信じられないのかなぁ?」

 マナはテヘへと笑い、傍らのヒカリのおでこを突付いた。

「やめてよ。もう…」

 その時、シンジが扉に向かって何か言い、そしてこっちに向かって歩いてきた。

「あ、おはよう」

「おはよ!碇君!」

「おはよう」

 気さくに手を上げるマナと、丁寧に会釈するヒカリの双方に微笑むシンジ。

 そこにはマナの言うような生臭い感じは全くなかった。

 心の中であら?と思ったマナだったが、言葉の上では自分の主張の方向性を変えようとは思っていなかった。

「アスカは朝からはいやだって?」

「マナ!」

「はぁ?まぁ、会いたくないって言われちゃった。はは…」

 頭を掻くシンジのお腹をマナは軽くパンチした。

「何か酷いことしたんじゃないの?アスカ変だったしね」

「あ、やっぱり…。まだ、怒ってるんだ…」

「ねえ、碇君。あなた、アスカに何したの?」

「マナ!よしなさいよ」

「ヒカリは黙ってて。事と次第によったら、許さないわよ、私」

 顔ではすごんでいたが、心中ではワクワクしてシンジの返事を待っていた。

 シンジへの憧憬は完全にどこかに飛んでいってしまっているマナである。

 そのシンジは顔を真っ赤にして口篭もった。

 まさかこの二人に、アスカの乳房を(例え事故とはいえ)掴んだと言えるわけがない。

 従って、彼は視線を逸らせるようにして「ごめん!」と階段を駆け下りていった。

 その背中を見送って、マナは何度も頷いた。

「ふ〜ん、そういうことか」

「何?そういうことって」

 マナはにんまりと笑って、ヒカリの耳元で囁いた。

「あのね。アスカは碇君にレイプされたのよ」

「ええっ!」

 大声を出したヒカリの口を慌ててふさぐマナ。

「もう!叫ぶんじゃないの」

 ヒカリは信じられないような表情で、マナを見返した。

「か、考えすぎなんじゃない?」

「ううん。私の推理に間違いはないわ!ほら、よくあるじゃない。

 肉体の欲求に負けて恋人を無理矢理って。最初は乱暴されて憎んでいたけど、彼に女にされた身体は…ってさ」

「マ、マナ…。あなた、凄いこと考えるのね」

「そう?よくある話なんじゃないの?」

「よくあるかしら?それに、碇君そんな感じじゃなかったような」

「きっと昨日の今日ですっきりしちゃったのよ」

「マナ…あなた、とんでもないこと平気な顔して言ってるのわかってる?」

 ヒカリはだんだん馬鹿らしくなってきた。

 マナは完全に自分の思い付きを事実だと思い込んでいるが、まるでドラマか漫画である。

 この未経験者の耳年増…。

 大きな溜息をつきながら、マナを見やるヒカリだった。

 

「只今ぁっ!」

 鍵を開けて勢いよく中に入ってきたマナをアスカは見ることができなかった。

「アス…カ…?」

 壁際で蹲り顔を覆っているアスカの姿に、マナが絶句して立ち竦んでしまった。

 マナの後ろから入ってきたヒカリは、アスカを見て慌てて駆け寄った。

「どうしたの?アスカ!」

 肩を掴んだヒカリに、アスカは顔を上げた。

 涙で濡れた顔を。

「アスカ!そんなに泣いて!どうしたのよ」

 心配げなヒカリの顔を見たアスカは、彼女の膝に縋りついた。

 そのまま堰を切ったように泣き出すアスカだった。

 二人ともこんなアスカをはじめて見た。

 そもそも涙を流したのを見たことがなかった。

 それがまるで子供のように大声で泣いている。

 ヒカリもマナもどうしたらいいか、まったくわからなかった。

 仕方無しに、ヒカリがアスカの髪を撫で、マナが傍らに跪きその震える背中を優しく撫でた。

 とにかくアスカを落ち着かせないことにはどうしようもない。

 しゃくりあげるアスカは、やがて落ち着きの気配を見せ始める。

 肩の震えは止まってきたが、ひくつく横隔膜はなかなか収まらない。

 それでも二人がかりで慰められていたのだから、アスカは幸せである。

 マナが小型冷蔵庫から麦茶を出してきてコップに注ぐ。

 顔をぐしゃぐしゃにしながらそれを少しづつ飲むアスカ。

「落ち着いた?」

「ぐすっ…うん…ごめん…」

「でも、安心したなぁ、私」

 マナが明るく語りかけた。

「アスカも普通の女の子なんだって」

「?」

 涙塗れのアスカと、慈母の如き表情のヒカリがマナを見る。

 また変な事を言い出すんじゃないでしょうね。

 ヒカリははらはらしながら、マナの次の言葉を待った。

「こんなに泣いちゃって。でもさ、アスカ。あなたが今回経験したことはね」

 真面目な顔でマナが言う。

「女の子ならみんな経験しないといけないことなの。わかる?」

「そ、そうなの…?」

 アスカが恐る恐る聞き返す。

「そうよ」

 大きく頷くマナ。

 その顔は自信に満ちている。

「じ、じゃ…マナやヒカリも、ずっと前に経験してるの?」

「はぁ?」

「だ、だって、私、遅いほうじゃ…」

「そ、そんなの知らないわよ。平均何歳で経験するなんて確かめたことないもん」

「でも、マナは経験してるんじゃ…」

 あまりに自身たっぷりなマナの言葉に、アスカはてっきり豊富な経験をもっているものだと誤解していた。

 もちろん、最初の時点で食い違っているのに二人とも気が付いていない。

 アスカは自慰のことだと思い、マナはアスカがシンジと初体験をしたことだと思い込んでいる。

「私は…1回もないわ」

「えっ!」

 アスカは青ざめた。

 みんなが経験していることだと思っていたし、さっきマナ自身もそう言ったではないか。

「な、ないの?したことないの?」

「ええないわ。ヒカリだってまだよ」

「ええっ!」

 アスカはびっくりした。

 親友二人が1回もしたことがないのに、自分はつい今しがたまでその行為に溺れていた。

 何と自分は淫らなのだろうか。

 アスカは打ちのめされたような思いに包まれた。

「ち、ちょっと、マナ。アスカが変よ」

 唇がへの字になって、またもや涙がぼろぼろと沸き出てくる。

「や、やっぱり、私が変なんだ。こ、こんな淫乱なのシンジに嫌われる。嫌われちゃうよぉっ!」

 両手で頭を掴むようにして、アスカは泣き喚いた。

「い、淫乱って、アスカ言い過ぎだよ」

「そ、そうよ。あ、あれって、慣れると気持ちがいい……って言うよ」

 ヒカリがつまりながら語りかける。

「で、でも、みんなしたことないんでしょ!わ、私だけ、あんなことに夢中になっちゃって!」

「アスカって感じやすかったんだ…」

「マナ!変なこと言わないで!」

「うわぁっ!」

 マナの安直な感想を聞いて、またアスカが泣き出す。

「もう!そんなこと言うから!アスカ、ほら落ち着いてよ」

「で、でも、マナの言うとおりなの。き、気持ち…よくて、信じられないくらい、気持ちよくて」

「わぁ…そんなに?」

 アスカは泣き顔のまま頷いた。

「凄い!最初は痛いだけだって聞いてたのに。アスカって凄いんだっ!」

「ぐすっ…さ、最初じゃなかったの……」

「げっ!」

「嘘っ!」

 衝撃の告白にマナとヒカリは目を剥いた。

 アスカはすでにバージンではなかった!

 それは完全に二人の予想を超えた告白だった。

「じゃ…最初…って、いつ…だったの?」

 マナが恐る恐る訊く。

 親友がまるで別の人間のように思えてきた。

「中……2」

「ええっ!中2って、中学2年の時に!」

 アスカが泣きながら頷いた。

 このマナの驚きようはどうだろう。

 やはり自分はとんでもない淫蕩な女だったのだ。

「相手は誰?まさか碇君じゃないでしょ」

「マナ!そんなこと訊いちゃダメよ」

 アスカは泣き止んだ。

 今のマナの言葉に何かが引っ掛かったからだ。

 相手……相手?

「ね。ねぇ、相手が……いるの?」

「はい?」

 その時、マナの脳裏にはまったく見当はずれな光景が繰り広げられていた。

 アスカは相手もなしに中学2年の時に経験した。

 それがレイプであっても相手は存在する。

 自分たちの学校にありがちのレズビアンにだって、相手は必要だ。

 となると、答えはひとつ。

 アスカは自慰によってバージンを失ったのだ。イコール、アスカは自慰の熟練者である。

 そしてシンジによってつい最近に……。

 マナが瞬時に思い切り的を外した回答を導き出した時、ヒカリの方はいたって常識的な答に到達していた。

 ああ…またマナの頓珍漢に振り回された。

 アスカが言ってるのは自慰のことだ。

 ヒカリ本人は本当にしたことがなかった。

 しかし、この数日はそんな欲求が少しづつ芽生えてはきている。

 間違いなく、トウジの存在がヒカリにそういう性的欲求を与えていたのだ。

 だが控えめなヒカリだけに、こんな場所で自慰をするのはためらわれていた。

 だから、むしろ形振り構わず自慰をしてしまうほどシンジに恋をしているアスカにある種の共感と感動を覚えた。

 アスカは少しづつ落ち着いてきた。

 ヒカリの母のような微笑と、マナの頓珍漢が少しづつ余裕を与えてくれたのだ。

 ところが、マナはまだ自分の世界に留まっていた。

 そして、得意のはったり攻撃に出た。

 もちろん、それは好奇心だけではなかった。

 親友の閉ざされた心を開くにはすべてをさらけ出す方がいいと、マナなりに考えた所為である。

「でも、こんな所で初体験なんてアスカも大胆よね」

「は?」

「マナ!違うわよ」

「ヒカリは黙ってて」

「私、してないよ」

 アスカが呆気にとられて言った。

 涙も止まっていた。

 マナ様様であろう。

「嘘。したでしょうここで」

「してないってば」

「してるわよ」

「してないわよ」

「しつこいわね。ネタは上がってるのよ」

「しつこいのはどっちよ!私、絶対にしてないっ!」

 いつの間にか、二人は立ち上がって顔をつき合わせて睨みあっていた。

「ふ、二人とも、やめて…」

 ヒカリが弱弱しい声で仲裁に入ろうとする。

 しかし、復活したアスカに聞く耳はない。

「うっさいわね!してないことをしてるだなんて、アンタ馬鹿ぁ?!」

「馬鹿とは何よ、馬鹿とは。証拠だってあるわよ」

「はん!そんなのあるわけないわっ!」

「あるもん!」

「ない!」

 マナは一生懸命考えた。

 証拠をでっち上げないといけない。

 そして思いついたことは自分が考えたことに大きく矛盾していたが、マナ本人はそのことにまるで気付いていなかった。

 つまり自慰によって破瓜したという自説をあっさり捨てて、シンジとの性行為によって出血したという新説を導き出したのだ。

「私はねぇ、しっかり見たんだよ。座布団に血がついてたの」

「はぁ?バッカらしいっ!出てない血が付くわけないでしょうが」

「ついてたもん!」

「ははは!嘘ばっかり!」

 自分の行為に自信を持っているアスカは胸を張っている。

 逆にアスカのそういう態度を見て、マナは意地になり始めていた。

「ついてたよ。端の方だったからわからなかったんじゃない?」

「あのね。してないのに血が出るわけないでしょ。だいたい、シンジはこの部屋に入った事ないもんね」

「嘘吐き」

「ホントよ。ねぇ、ヒカリ…。あれ?どうしたの?」

 ふと横を見ると、ヒカリが真っ青になっていた。

「ま、マナ?」

「は?」

「本当に血がついてた?」

「あ、う。うん。肝試しの翌朝に見たの。ついてたよ。そりゃあもう、べっとりと」

 自分に味方をしてもらえるものだと思い込み、マナは嘘を大きくした。

「い、いやだ…」

「でしょう?不潔よね。アスカったら」

「ちょっと止めなさいよ。マナ」

「へへへ、負けを認める?アスカ」

「もう、馬鹿マナ。ヒカリを御覧なさいよ」

 アスカは傍らのヒカリの身体を抱き寄せた。

「えっと、どうしたの?」

「このオタンコナス。どうしてそんなにニブチンなのよ、アンタは」

「えっ?えっ?」

 状況をよく見ていなかったマナが慌ててヒカリの様子をよく見た。

 彼女はアスカに抱かれてしゃくりあげている。

「ど、どうしたの?何があったの?」

「こら!アンタが加害者じゃない。しらばっくれちゃって」

「えっと…何がどうして?」

「はぁ…救い様がないわね、もう。ほら、ヒカリ、血なんかついてなかったのよ。

 あれはマナの嘘。大嘘なの。大丈夫よ、誰にも見られてなかったの」

「あ、あの…」

「ほら、アンタもあれは嘘だったって早く言いなさいよ」

「そ、それって…」

「もう、救い様のないニブチンね、アンタってヤツは」

「ああっ!まさか、それって、そういうこと?」

 ストライクゾーンを思い切り外れたボールは、別の人間のど真ん中に当たったのだ。

「状況がわかったなら、さっさとヒカリに謝る」

「ご、ごめん!アスカを白状させようとして、私嘘ついたのよ。まさか、それがヒカリに…」

 マナはうなだれてしまった。

 アスカならこてんぱんにやっつけてしまっても大丈夫だと思っていたが、相手がヒカリではまずい。

 潔癖症として学内で有名なのだ。

 その彼女があっさりとバージンを捨てていたということを知られるだけでも恥ずかしいはずだ。

 それが破瓜出血の跡を人に見られた。しかもこともあろうに親友に見られたと思ったのだ。

 ヒカリが泣き出してしまったのは無理もない。

 さめざめと泣くヒカリと、黙り込んで膝を抱えてしまったマナに挟まれて、

 アスカは思い悩んでいた自分にかまっていることができなかった。

 まったく、もう…。

 落ち込んでいたのは私だったのに、何て酷い連中だろう…。

 アスカは肩をすくめると、にやりと笑った。

「はいはい、それじゃこれからは秘密はなしね」

 アスカの明るい声に二人が顔を上げた。

「私たちの間で秘密なんか作るからこんなことになんのよ。

 私はね…」

 アスカは息を吸い込んだ。

「碇シンジのことが好き。大好き。

 その気持ちに気付いたのがオナニーしたあとだったから、落ち込んでたわけ!」

 アスカは顔が真っ赤になってしまった。

 こんな告白をするなんて、思っても見なかった。

「アスカが碇君のことを好きなのは、ずぅ〜と前からわかってたわよ」

「へ?そうなの?」

 マナの一言に、アスカがきょとんとした。

「だって、碇君にモーションかけようとしてる私に、物凄い圧力かけてたじゃない」

「あ…と、そうだっけ?」

「そうだったわよ。おかげで私は余りものを押し付けられてるんじゃない」

「余りものなんて、相田君が可哀相よ」

「あなたにも責任があるのよ、ヒカリ。さっさとあの関西弁ジャージ男とくっついちゃってさ…」

「それじゃ、マナはアイツの方が良かったわけ?」

 アスカの見事なツッコミに、マナはとぼけるしかなかった。

「ちょっと、それじゃ鈴原君が可哀相」

「だって、私の趣味じゃないもん」

「もう、アスカったら。つっけんどんみたいに見えるけど、凄く優しいんだから」

「ふ〜ん」

 マナが身を乗り出した。

 ヒカリの告白には興味津々なのだ。

 それはそうだろう。

 その告白はあの初体験なのだから。

 アスカも耳をダンボのようにして聞き入る体勢をとっている。

 そんな二人にヒカリはポツリポツリと話し始めた。

 あの肝試しの夜。

 冬月さんを幽霊と勘違いして、抱き合うようにして民宿に逃げ帰ったヒカリとトウジ。

 震えるヒカリを抱きしめているうちに……。

 

「で、痛かった?」

「ん…うん、少し」

「ホントに少し?」

 アスカが疑わしげに見る。

 彼女の得ている拙い情報でも最初は物凄く痛いと聞いている。

 将来的に自分も経験するのだから、この点ははっきりさせたい。

「えっと…やっぱり、痛かった…翌日まで残ってたから」

「うわっ、生々しい証言」

「そっか、やっぱり痛いんだ。何か、女って損よね」

「そうそう、男の子は最初でも気持ちいいんでしょ」

「で、でも…鈴原君は優しくしてくれて……」

 そう言った後に顔を上げると、アスカとヒカリがニンマリと笑っていた。

「それはご馳走様でした」

「惚気てくれるんだから、まったく」

「そ、そんな…」

「こうなったら、知りたいことをみんな教えてもらうわよ」

「そうよ。先輩」

 好奇心の塊と化した性的後輩二人に迫られて、ヒカリは悲鳴を上げた。

 

 しばらくして、質問も出尽くした頃、マナは大きな溜息をついた。

「どうしたの?マナ」

「何か、私だけ置いてけぼりにされたような感じ」

「そう?」

「そうよ!無警戒のヒカリはさっさとバージン捨てちゃうし、アスカだって秒読みみたいだもん。

 私だけ何にもないなんて、仲間はずれにされてるみたい」

「相田君もいい子だと思うけどなぁ」

「もう!どうしてアイツを私に押し付けるのよ。あんなの趣味じゃないの。

 私はもっと、スポーツマンで、カッコよくて、ハンサムなのがいいんだから!」

「マナには無理だって」

「ふん!あ、そうだ!決めた!」

「何を?」

「結婚するまでアイツには許さない。そうしよっと」

 アスカとヒカリは顔を見合した。

 アイツって、誰?

 無意識に言った言葉だったが、マナの心の中でケンスケの居場所が大きくなってきている。

 そのことがわかって、二人は微笑みあった。

 自分の言ったことに気付かずに、マナは一人ニコニコと頷いている。

 

 

「さすがにこんだけ降ったら開店休業でんなぁ」

「この雨じゃ休みにしてやるって言っても嬉しくないか」

 シゲルがからかうように言う。

「ま、嬉しくなくても、休みだ。ここは俺一人でいいよ。お前らはとっとと民宿にでも戻りな」

「俺一人だってさ。あそこにマヤさんがちゃんと座ってるじゃないか」

「お邪魔虫は消えろってことだろ」

「ほな、とっとと消えましょか」

「ああ、何とでも言え」

 シゲルは鼻で笑った。

 どんなに冷やかされようとも、マヤに対しては動じることはない。

 数日前に、“シゲル”と“マヤ”と呼び合う仲になった二人だった。

 

 1本の傘に3人の野郎どもがくっついて歩く。

 大降りではないが、傘がないと全身が濡れてしまう。

「これからどうする?」

「部屋でごろごろってのも、勿体無いよね」

「せやな…ほなわしはちょっとショッピングにでも…」

「ショッピングだってさ。トウジには似合わない言葉だぜ」

「うるさいわい!」

「デートって正直に言えば?」

「お、お、お、おう、そのデートや。わし、誘うてくるわ!」

 トウジは傘から飛び出した。

 そのまま全速力で民宿に走っていく。

「俺たちに誘うところを見られたくないんだぜ、あれは」

「トウジらしいや。で、ケンスケは?」

「隣町のカメラ屋。修理ができてるはずなんだ」

「あ、あのカメラ」

 暴漢に襲われたマナを助けるために壊したカメラ。

 案外と重傷ではなかったので、メーカーに送らずに数日で修理できたのだ。

「一人で行くの?」

「え?多分…霧島がついてくると思うんだけどな。アイツ、そんなこと勝手に宣言してたから」

「そうなんだ」

「ああ。ということで、シンジはシンジで自分の道を進めよ」

「え?」

「お前の相手も一人ぼっちになるってことじゃないか。もうじき、お別れなんだぜ。

 このままサヨナラにするつもりはないんだろ?」

 シンジは頷いた。

 そんなつもりは毛頭ない。

「おっと、お前、何だか男らしくなったんじゃないか?

 いい傾向だぜ。じゃ、俺も先行くな」

 ケンスケはシンジの返事も待たずに傘を押し付けて走っていった。

 シンジはケンスケの後姿を見送って、ふっと笑みを漏らした。

 この夏は、素晴らしい夏休みになった。

 いや、まだアスカと正式に彼氏彼女になったわけではない。

 しかし、シンジには自信があった。

 もし、アスカがいやがるようなら、どんなことをしてでも自分の恋人にしてみせる。

 彼は心の中でそう決意していた。

 はぁ…どんなことっていっても僕には結局できないだろうなぁ…。

 シンジは傘の中で苦笑した。

 自分の限界は充分承知しているシンジだった。

 とにかく、シンジは彼としては最大級の決意を胸にアスカの元へ向かった。

 

 そして、アスカはそんな彼を待ち構えていた。

 手薬煉ひいて。

 

 

 

 

TO BE CONTINUED

 


<あとがき>

 アスカ編その4です。

 ああ、何だか前回の説明に終始してますね。

 完全につなぎのお話になっていますが、次回はついに最終回…の予定です。

 アスカが簡単に復活しているように思われる方もいらっしゃると思いますが、もともとがそんなに分厚い壁にぶつかっていたわけではありませんから。何よりも、あのヒカリが初体験を済ましていたこととマナのへっぽこ攻撃が功を奏したのでしょう。女性って複雑怪奇ですからね。単純な男性から考えると。

 さて、あと一言だけ。冗長とのご指摘を某所にて頂戴しましたが、この展開の遅さは私の作風ですから。今回も時間にしてみると2時間も進んでません。ま、いっか。これが私の進む道。

 

2003.10.29  ジュン

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